当研究会の設立までの経緯について
1998年7月シロクス歯科商会九州支店において一般社団法人国際歯周内科学研究会顧問である生田図南が主催する生田式2日間コースが開催されました。
その後当コースは日本各地にて開催されるようになり、2015年7月までに4088名の歯科医師が受講しています。そして、講習会受講者のうち2015年7月時点で1962名が当研究会会員となっております。
当コースの中に薬剤を使用した歯周内科治療がありますが、この治療方法は従来の歯周病治療方法に比較すると、革命的な治療効果がある
ということで、殆どの受講歯科医師が実施しその治療効果に驚きました。
受講歯科医師から、是非、歯周内科治療だけでなく、その他の歯科の治療分野についても研究、情報交換の場所が必要ではないかという
意見が多く寄せられるようになり、2001年9月、研究会会員ホームページの開設に至りました。その後、歯周内科治療の普及の為に、一般
に広く公開すべきではという意見があり、ホームページに関しては2005年10月一般公開となりました。
歯周内科について
歯周内科学とは歯周病診断のストラテジー(1999年医歯薬出版)によると「歯周病の審査・診断はこれまでの方法に生化学的、生物学的なものが加わり歯周局所から全身との関わりに視点がおかれ、また、治療は原因の 機械的な除去に加えて薬剤による治療など歯周治療に『歯周内科』(periodontal medicine)とも表現できるほどの領域が台頭してきている。」と記されている。
また、歯周外科から歯周内科へというタイトルで以下のようにも「歯周病治療では、機械的な汚染物質の除去という時代から大きく変化して、歯周内科という言葉で表現する必要のあるほど、薬剤、生物学な物 質の登場そして全身疾患とのかかわりが大きな領域を占めるように変化してきている。」と掲載されている。
『当会の考える歯周内科治療』
歯周病は細菌類の感染症であるという認識の上に立ち、医学的にその治療法を考え、歯周病菌および真菌の除菌と歯周病病原性のない正常微生物叢の獲得を目的とし、機械的・外科的な治療法に先立ち、位相差顕微鏡やリアルタイムPCR検査での菌及び菌叢の検査の後に行う、抗菌剤および抗真菌剤を用いた内科的治療法をいう。
『カンジダと歯周病の関係に関する当会の考え方。』
当会では下記文献に基づき、カンジダは歯周病の悪化に関与する増悪因子と捉えています。
文献
Candida albicans enhances invasion of human gingival epithelial cells and gingival fibroblasts by Porphyromonas gingivalis
Riyoko Tamai 1, Miho Sugamata, Yusuke Kiyoura
Affiliations expand
PMID: 21742026 DOI: 10.1016/j.micpath.2011.06.009
当会の考える歯周内科治療
歯周病は細菌類の感染症であるという認識の上に立ち、医学的にその治療法を考え、歯周病菌および真菌の除菌と歯周病病原性のない正常菌叢の獲得を目的とし、機械的・外科的な治療法に先立ち、位相差顕微鏡での菌及び菌叢の検査とリアルタイムPCR検査による歯周病菌のDNA検査の後に行う、抗菌剤および抗真菌剤を用いた内科的治療法をいう。
■治療方法
歯周内科治療は位相差顕微鏡で、口腔内に感染している細菌・真菌・原虫などを特定し、さらにリアルタイムPCR検査による歯周病菌のDNA検査で菌の有無を確認し、それらの微生物に感受性のある薬剤を選択し、微生物叢を非常に綺麗な状態に改善することで歯周病を内科的に治す治療方法です。
その治癒経過の確認のために私たちは治療前、治療後の比較できる動画管理システムの導入を勧めています。
治療前の非常に汚れた微生物叢が治療後は非常に短期間で綺麗に改善し、術前・術後の状態が一目瞭然に画像で示されるという利点があります。
治癒経過は患者様自身が、はっきりと自覚できる程、歯茎からの出血や排膿が短期間で改善されます。以前は、長時間歯磨きや外科治療によって1~2年の治療期間でそのような綺麗な微生物叢を獲得していたのです。微生物叢が改善されたら、歯石を除去します。その場合も、微生物叢が改善されていると、冷水痛が非常に少なくなります。
私たち会員はこのような画期的効果をもつ歯周内科治療を更に開発し、普及し、教育訓練し、ひいては誰でも治療を受けられるように保険償還上
の位置づけを確立することを目指しています。
歯周内科治療は位相差顕微鏡・動画管理を有し、リアルタイムPCR検査による歯周病菌のDNA検査が可能な施設で実施されます。
また、治療方法や治療費については、保険償還が確立していませんので、各施設の治療方針などにより、相違があります。
ガイドライン
■ 患者さん説明
歯周内科治療において、位相差顕微鏡・リアルタイムPCR検査にて診査、診断することが重要である。
その際、患者に以下について説明すること
- 現在の口腔内の菌の状態
- 治療方法
- アムホテリシンBシロップについて
- アジスロマイシンについて
- 定期検診における歯周病管理について
以上を説明の上、同意書にサインするのが望ましい。
■ 混合診療について
2008年に定められた厚生労働省のガイドラインより
- 歯周病治療においてアムホテリシンBシロップをうがいや歯磨きに用いた場合、 一連の歯周病治療はすべて自費診療となる。
- また、保険診療の中で、アムホテリシンBシロップを販売あるいは無料配布した場合は混合診療となる。
- 歯周病治療以外の治療に関しては、自費により歯周病治療中においても保険で治療可能である。
- 自費による歯周病治療にて完治し、治療がいったん終了し、その後患者が保険診療にて治療、歯石除去などを希望した場合は保険での治療を行わなければならない。